ポスター発表はこう乗り越えろ!
こんにちは。春季の学会シーズンが始まりますね。
演者として参加される方は、どんなに前々から準備していたとしても気が脱けることなく、緊張のママ発表の瞬間を向かえるかと思います。多くの方が直前まで、プレゼンの運びや手順のチェック、確認をされるのではないでしょうか。
今日は研究者時代の経験を振り返りながら、学会でのポスター発表をうまく乗り越えるヒントについて書いてみたいと思います。
研究ポスターは簡潔に作成
研究ポスターを作成する方であれば、視覚効果にうったえるデザインにするため、ウェブをはじめ研究ポスター作成のコツの情報収集に力を入れることと思います。
ポスターセッションに関するノウハウが書かれたウェブサイトがあまり多くないのは意外なのですが、それでも検索であがってくる情報を見ると、下記のようなことが紹介されています。
- 使用ソフト:PowerPoint、Microsoft Word、Adobe illustratorなど
- フォントのサイズを小さくしない
- 色を要所に使って情報にメリハリをつける
ここで大切なのは、直感的にわかる説明/図/キーワードに仕上げることだと思います。
発表する際、どのような専門分野の方が聴いていらっしゃるのかわからないため、まずは視覚的な情報提示で概略を理解してもらうことが何より重要になると思います。ポスターはそのためだといってもいいかもしれません。
大学や研究者の方が発信しているこちらの情報も参考にしてみてください。研究ポスター作成の概略が摑めると思います。
目を引くポスターを参考にする
国際学会などに参加したときに、一目見てわかりやすく美しいと感じたポスターのデザインやレイアウトを覚えておき、参考にするのも一案です。
その研究ポスターの中でも特に秀でた要素(わかりやすく見栄えのよいインフォグラフィックやチャート)、構成(ポスター内のロジックの流れ)、また色使いなど、自分が気に入った点をメモしておきます。メモをすれば、これから作る研究ポスター、あるいは作りかけの研究ポスターの改善に活かすことができます。
海外の研究者が発信するこんなブログ記事も参考になります。このブログでは、縦長/横長の研究ポスターテンプレートをダウンロードでき、研究ポスターを簡潔にまとめるコツも紹介されていることから、多くの研究者が参考にしているようです。
なお、ポスターサイズも含めた学会ごとの規定はきちんと確認したうえでの話ですが、自分がポスターを作ったときには文字サイズは最低でも40pt以上と教わりました。小さく読みにくいと書いてあることが頭に入ってこないから、と。
- 具体例A0サイズ
- タイトル: 100 pt程度
- 発表者名: 55 pt程度
- 見出し: 60 pt程度
これ位のサイズ感を頭に置いて作っていました。
あまりに装飾が過ぎても読みづらいですし、ケバケバしい色にしても学会の雰囲気によっては目立つというより浮いてしまう可能性もありますから、バランスが肝要になります。(もっとも、個性を光らせるキャラクターづけという点ではありかもしれません)。
研究ポスターの中に、関連研究のグラフィカルアブストラクト(TOC)の全体あるいは一部を使うという方もいらっしゃるかもしれません。ユニークでインパクトのあるTOCをポスターに盛り込んで観客をひきつけたい、また会話を盛り上げたい。そんな方は、ケムステのこんなポストもご覧になってみてください。研究の分野をこえて、ふっと笑いを誘うウィットのきいた画像作成のインスピレーションを得られるかもしれません。
また、根本的な視点から解説がされている以下のサイトも勉強になりましたので、ご紹介しておきます。
- 【学生向け】研究発表ポスター制作の秘訣 Part 2 配置(レイアウト)のセオリー|アドビ
- 第16回“魅”せるプレゼンテーション – チェックリスト!(同シリーズを読めば「カラーユニバーサルデザイン」が何かも理解できます。)
失敗を成功にいかす
ポスター発表に緊張する理由として、その場に立つまでわからない”ナマモノ”だからということが挙げられます。こちらでできることは準備だけになりますから。
多くの演者が、ポスターセッションの終了後、以下のような理由で「失敗したなあ……」と感じるようです。
- 文字情報を詰め込みすぎて見にくかった
- 一見して全体の流れがわかりにくかった
- 事務的に説明文を読み上げてしまった
- 発表時間が余って慌てた
- 時間が足りなくなって焦った
この後悔から見えてくること、それは、「ポスター発表成功の鍵は、初めてこの研究を見聞きするひとの立場になって準備すること」ではないでしょうか。
あまりに多くの文字情報がポスターに載っていれば、読む側は内容を聞くことより文字を追うほうに神経がいってしまうでしょう。
ポスターに書かれていることを事務的に読み上げるのも、同様に相手への意識を欠いています。
ポスターを見る側になって考えてみてください。こちらの存在を無視し、時間内におわらせようと早口の棒読みをつづけるような説明は、そのテーマによほどひっかからないかぎり、聞く気が起きなくても無裡はないです。
「そう言われても具体的にどうすればいい?」という方へ、詳しくフォローされているおすすめサイトと本をこちらに挙げておきますね。
プレゼン力はアカデミアを離れても役に立つ
このようなアカデミックなポスターセッションを成功させるための訓練は、研究職/アカデミアを離れたら意味がない、ただの通過儀礼でしょうか?
そんなことはないですよね。
ポスター発表を成功させるコツは、自分の根拠や説明、考えなどを人に伝えるために必要な基本的な要素ばかりです。けっしてたんなるアカデミックなテクニックではありません。
わかりやすい言葉で相手に要点を伝える訓練や、理解してもらえように努力する姿勢は、アカデミアを離れて一般企業に就職した後ももちろん役に立つソフトスキルです。
- なにがどのように受け取られるかわからないナマモノを前に臨機応変に対応すること。
- 相手の立場に立って説明をすること。
- そのために時間に終わるための準備や工夫をすること。
これらは人と人との関係性において、不要になることのない重要な要素だと言えるでしょう。
「学び続ける組織」をキーワードにするSchoo for businessのサイトに、プレゼンテーション全般についてまとめられた記事を見つけました。
また、ポスターセッションを含め、プレゼンを成功に導くためのコツが紹介されたこんな記事も参考になるはずです。
さいごに
プレッシャーが重くのしかかるポスター発表を控えた皆様、どうか入念に準備をして、当日は肩の力を抜いて、がんばってください。
過ぎれば一瞬、とにかくできるだけの準備をして誤魔化さず真摯に質疑応答ができれば、その分の見返りがないことはまずないと思います。
また、研究生活のヒントになることをつれづれと書いてみます。最後まで読んでいただきありがとうございました!