研究倫理審査はこう乗り越えろ!(前編)
こんにちは!
新しい環境での新しい研究生活が始まってしばらく時間が経ち、教職でも学生でも、研究の途にいる皆様はいろいろと書類作成をしなければならない場面もあると思いますが、みなさんめげずに過ごしていますか?
研究者時代、ある程度キャリアをつみ大量の書類を書くようになってもなおつらかったのは、倫理審査委員会に提出する申請書の作成でした。事務作業が苦手なわたしには天敵で、胃の痛くなる作業でした。
四角四面な研究倫理審査(冗談です、過去の倫理違反案件から学ぶべき不可欠なプロセスです)にまつわるあれこれに泣いたのはわたしだけじゃないはずなので、今回は「倫理審査はこう乗り越えろ!」というテーマで、前・後編に分けてまとめてみます。
前編は、「研究の倫理審査とは」そして「倫理審査申請書類のひな形をチェック」です。
1. 研究の倫理審査とは
まず基本の「倫理審査とは何か」という点をおさらいしておきます。ひとまず身も蓋もなく要約すると、
人を対象とした研究において
倫理的観点=人間の尊厳および人権が守られるか
科学的観点=研究が適正に推進されるか
を審査するプロセスです。厚生労働省が定める「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(平成26年文部科学省・厚生労働省告示第3号)」で求められる要件を満たした機関・委員会によって執り行なわれます。詳細はこちらの厚生労働省の指針をご覧ください。
「人を対象とした研究」という明記からわかるとおり、医学分野の研究においては倫理審査のプロセスは必須です。
余談ですが、日本の人文学・社会科学系では医学系と異なりまだまだガイドラインが少なく、学内規程が明確に整備されていない場合も多々です。「pixiv論文問題」(2017年)等が有名ですね。この問題についてはまたの機会に考察してみたいと思っています。
本題に戻ります。倫理審査の方針には、倫理的観点と科学的観点が含まれます。
- 倫理的観点……研究対象者の権利,安全および福利・ウェルビーイングが保護されているか
- 科学的観点……研究対象者を不用意にリスクや損失にさらすことなく,適性に根拠の提示をしているか
人間を対象とした研究である以上「負担ならびに予測されるリスクおよび利益の総合的評価」(リスク・ベネフィット評価)は不可欠になりますし、当然研究計画も科学的な見地から審査されます。
実際の倫理審査は下のような基本方針にそって行なわれます。
- 社会的および学術的な意義を有する研究の実施
- 研究分野の特性に応じた科学的合理性の確保
- 研究対象者への負担ならびに予測されるリスクおよび利益の総合的評価
- 独立かつ公正な立場に立った倫理審査委員会による審査
- 事前の十分な説明および研究対象者の自由意思による同意
- 社会的に弱い立場にある者への特別な配慮
- 個人情報等の保護
- 研究の質および透明性の確保
この長さだけで軽くめまいを起こせます……。
2. 倫理審査申請書類のひな形をチェック
さて、一度でも倫理審査申請をしたことのあるかたは共感してくださると思うのですが、審査よりもつらいのが、倫理審査委員会への申請までの準備! ……だとわたしは思います。
たとえば、文部科学省の「人を対象とした医学系研究に関する倫理指針」にある20以上の項目から自分の研究に必要な記載事項がわからずに混乱したり、対処がわからないことだらけでパニックになったり、とにかくつらかったです。
そんなときにわたしがやったのは、ひな形を熟読!することでした。たとえば臨床研究の種類とひな形の種類をざっと書くと以下に分かれます。
【観察研究Observational Study用ひな形】
1. 観察研究
- 後ろ向き観察研究
- 侵襲のない前向き観察研究
【介入研究 Interventional Study用ひな形】
1. 観察研究
- 侵襲のある前向き観察研究(←ミソ)
2. 介入研究すべて
大概のガイドは敷かれているので、確実に関係がある研究計画書のひな形をよく理解することが「急がば回れ」だと思います。使用可能な定型文として準備されている場合もあります。
臨床研究デザインの種類についてはこちらのページに詳しく載っていますので、よかったらどうぞ。
後編では、倫理審査申請の準備段階ですべてクリアしておきたいチェックポイントをまとめてみます。お楽しみに♪