懇親会の英会話攻略法!例文とお役立ちリンク
パンデミックを機に国際的な学会がオンラインで開催されるようになりました。わざわざ移動しなくても参加できますし、旅費や滞在費がかからないというメリットがある一方で、今まで知らなかった人たちと知り会いになる、あるいは名前しか知らなかった人と共にプロジェクトを立ち上げるような機会は、なかなか得られないと感じます。
今後、学会の開催はリアルとオンラインのハイブリッドになっていくのでしょうか。
「海外の大学院に進学したい」あるいは「海外でポスドク先を見つけたい」と思っている人にとって、国際会議は絶好のチャンスです。
あらかじめポスター発表や口頭発表のスケジュールをチェックし、発表を見て気になるラボのメンバーの名前と顔を一致させておけば、休憩時間や懇親会の会場で探し出すことができるでしょう。ボスと話ができれば研究テーマや採用状況を知ることができますし、ポスドクや大学院生と話せれば、ラボの様子やボスの人柄もリサーチできます。
でも、いざ声をかけるとなると、心理的なハードルが高くなってしまいますよね。英語であればなおさらです。イギリスのコーンウォールで行われたG7サミットで談笑の輪から外れている総理大臣の様子が報道されましたが、他人事ではありません。
どうすれば、懇親会での英会話がはずむのでしょう?オンライン学会でもリアル学会でも役立つ、英会話攻略法を探ってみましょう。
大抵の懇親会は立食形式かと思いますが、初対面の相手にどう話しかければいいのか、また何を話せばいいか、悩むところです。
きっかけを掴むための会話をスモールトークと呼ぶそうですが、英語ネイティブの人にとってもスモールトークは悩みの種なようで、YouTubeで“small talk”と検索をかけるといろいろな動画が見つかります。
学会の懇親会でも使えそうな会話のコツやフレーズをまとめてご紹介します。
まずは話しかけてみる
気になる人を見つけたら、挨拶をして簡単な自己紹介をしてみましょう。日本人の名前は外国の人には分かりにくいので、名札を見せながら自己紹介するといいでしょう。
例えば行きたいと思っているラボのPIに話しかけるとしたら、こんな感じです。
X: Hello, Prof. Y. Nice to meet you.
Y: Hi, How are you?
X: Great. I am <自分の名前>, working in the <所属しているラボのPI>’s lab as a PhD student in Tokyo. I was really excited about your talk today. Well, actually, I’m looking for a lab for working as a postdoc. Do you mind talking to me for a couple of minutes?
Y: Sure. So, what do you want to do in my lab?
話題の見つけ方
このように伝えたい内容がはっきりしている場合、会話は意外と弾むものです。
問題は、「お互いある程度知っているけれど、そこまで深い付き合いは無く、なにか会話を続けたいけど、さしたる話題もない…」時や「たまたま隣にいたので挨拶と自己紹介をしてしまったけど、さて困った。次に何を話そう?」というケースです。日本語でもこういう時は話題に困りますよね。
どうやって話をきりだせばいいのでしょう?
<おすすめの話題1:食べ物>
懇親会の時は食事を載せたお皿を手にしていることでしょう。相手のお皿を見ながら
- Do you like <食べ物の名前>? Me too!
- So, where are you from?
- Is this<食べ物> popular in your country?
などと聞いてみると、初対面でも会話がはずみますね。
<おすすめの話題2:仕事>
学会に参加しているのは、ほぼ100%研究者ですが、取り組んでいる研究テーマや手法は多岐に渡ります。何かのご縁で知り合ったのであれば、
- So, what do you do?
と相手が何を研究しているかを尋ねてみましょう。
さらに会話が弾みそうなら、
- 今のラボに来てどれくらい経つのか(How long have you been doing ~)
- なぜそのテーマに興味をもったのか(What motivated you get into ~)
- 以前は何をしていたのか(What did you do before this?)
なども聞いてみるといいでしょう。もしかすると、自分が行きたいと思っている町に、相手が住んでいたことがあるかもしれません。家賃や治安など生活情報についても聞いておけば、後々、きっと役に立ちます。
<おすすめの話題3:相手を褒める>
会話が弾んできたところで、相手をさりげなく褒めるのも有効です。
こちらの動画で紹介されている例になりますが
- Those are cute shoes. Where did you get them?
- I love that sweater. Is it new?
など
「褒める」+「追加のコメント」
は定番の会話のパターンです。
動画の中でも説明がありますが、これらの質問は「どこでその靴を売っているのか」あるいは「そのセーターが新しいかどうか」を聞きたいのではありません。あくまで「私はあなたに関心がありますよ」というジェスチャーなのです。逆に自分がこのような質問を受けたら、「なんでそんなことを聞くんだろう?」と怪訝な顔をせず、ニコニコしながら答えるようにしましょう。
余談になりますが、英語は直接的な表現を好む言語で、日本語のような婉曲的な表現はない、と思っていませんか?
そんなことはありません。京都弁で「ぶぶ漬けでもどうどす?」は「そろそろお帰りの時間ですよ」を意味するそうですが、英語の婉曲表現もなかなかのものです。英語だと、会話の意味を理解するのに精いっぱいになりがちですが、表現によっては裏の意味があることを 頭の片隅に入れておきましょう。
<気をつけるべき話題>
よく言われていることですが、初対面の相手と話す際には政治や宗教の話題は避けた方が無難です。エスニックジョークも慣れないうちはやめておきましょう。
また、良かれと思ってやりがちな失敗が、相手の「見た目」を褒めることです。
先ほど挙げた例は、身につけている靴や服を褒めていますが、相手の顔や容姿を褒めるのは実はNGとされています。「目が大きくていいね」と褒めたつもりでも、本人は目が大きいことをコンプレックスに思っているかもしれませんし、そもそも、外見をジャッジすること自体が失礼とされています。
話題のチョイスについては、こちらの動画や、学術英語学会が寄稿するこんな記事も参考にしてみてください。
さらに会話を続けたいときの「魔法のフレーズ」
身近な話題をきっかけに会話が弾んだなら、さらにおしゃべりを続けたいと思うのが人情です。ところが聞きたいこと、伝えたいことはあるにもかかわらず、会話が途切れてしまうことがあります。なぜでしょう?
よくあるのは、一言で答えられる質問(one-word answer question)をきっかけに沈黙が訪れるというパターンです。
例えば、先ほど挙げた
- 今のラボに来てどれくらい経つのか(How long have you been doing ~)
という質問は、「○年です」と一言で答えられる典型的なone-word answer questionです。この手の質問が出てしまうと、相手が話を膨らませてくれない限り、パタッと会話が途切れてしまいます。でも、例えば、
- そのラボのどんなところが気に入っているのか(What do you like working there?)
と続けてみたらどうなるでしょう?
「設備は充実しているし、テクニシャンは良くサポートしてくれるし、ポスドクも多すぎず少なすぎず、いい感じだよ」という答えが返ってくるかもしれません。そうすれば、どんな機器を使っているのか、設備は共有なのか、テクニシャンはどんなサポートをしてくれるのか、何人くらいポスドクがいるのか、などなど質問がどんどん湧いてきますね。
one-word answer questionを避ける、とっておきの方法は
相手にアドバイスや意見をもらう
ことです。
例えば、翌日の夕飯をどこで食べようか決めていないのなら、また、その相手と一緒にご飯を食べられたらいいな、くらいに思っているのであれば、
- What are your thoughts about dinner tomorrow?
と聞いてみるのです。
ここで、例えば
- Do you know any good restaurant around here?
と聞いてしまうと、これはone-word answer questionになってしまいますので要注意。
What are your thoughts on/about ~
は相手から様々な答えを引き出すことができ、また様々なシチュエーションで使えそうなフレーズですね。
こちらの動画にも、one-word answer questionを避けるための様々な例文が紹介されているので、是非参考にしてみて下さい。
いよいよ会話が盛り上がってきたら
見知らぬ人と思いがけず会話が弾むのは本当に楽しいことです。私は修士2年の時に初めて国際会議に参加したのですが、その時の懇親会のことを今でも覚えています。
小さなグループに分かれて着席式の夕食会でしたが、たまたま隣に座ったイギリス出身の方が、つたない私の英語に合わせてゆっくりしゃべってくれました。サイエンスの話題だけでなく、自身の趣味であるアンティークガラスのコレクションの話も聞かせてくださり、気がつけば日本の江戸切子のことにまで話が広がりました。
先ほど、政治の話題はタブーと書きましたが、その場にいる人たちの対立を煽るのでなければ、むしろ政治ネタこそ盛り上がります。
例えば、オバマ大統領の後にトランプ大統領が選ばれ、反科学主義による悪影響が懸念されていた2017年のNobel Week Dialogueでは、Steven Chu博士が(28:10あたり)Truth will trump Trump「真理はトランプに勝つ!」というジョークを飛ばし、会場は笑いと拍手に包まれました。その場にいる研究者が全員トランプ大統領に反対する立場にいたからこそ、生まれたユーモアですね。
また、日本の映画やアニメ、ゲームの話題も鉄板ネタです。ポケモンやジブリ映画などは世界的に有名ですし、最近では「鬼滅の刃」も海外で上映されています。アニメの話題をプレゼンテーションの冒頭部に仕込んでくる研究者もいるくらいで、例えば、神経科学者でオプトジェネティクスの第一人者Gero Miesenboeck博士によるTEDのプレゼンテーションには、ドラゴンボールが出てきます。日本のアニメに対する関心の高さがうかがえます。
会話の予行演習をしてみる
せっかく話題が思い浮かんでも、それを英語で伝えることができなければ悔しい思いをすることになります。「いつか懇親会でこんな会話ができたらいいな」と妄想しながら、英作文をし、予行演習しておくのも1つの手です。
また、軽妙な英会話のやりとりを動画で見ておくと、イメージトレーニングしやすいかもしれません。なにも英語ネイティブ同士の会話でなくてかまいません。というより、むしろ、英語が母国語でない人の英会話の方が、私達にも真似できるので役に立ちそうです。
など、会話のテンポや進め方の参考になるかと思います。
もし、研究者同士の会話が聞きたいということであれば、羊土社から出版されている
もお勧めです。