英語論文を書くためのヒント
新年のご挨拶をしたばかりなのに、早いものでもう2月ですね。
大学によると思いますが、そろそろ年度末の研究計画書の提出やポスターセッションが控えている季節です。提出先によっては、研究内容を簡潔で読みやすい「学術英語」で書く必要もあるかと思います。
わたしたち非英語ネイティブにとって習得言語となる英語で、しかも専門的な論文を書くときには、多かれ少なかれ準備が必要になってきます。
執筆どころか、つたない英語で書いた論文には英文校正が必要であること、誰にチェックを依頼すればいいのかすらも、大学院に進学したてのころはわかりませんでした。「英語論文を書くためになにをすべき?」というはてなが飛びまくり。
そこで今回はそんな基本に立ち返って「英語で論文を書くこと」にフォーカスしてみたいと思います。4月に新生活を始められる学部生や院生の方の目にとまりますようにと祈りつつ・・。
読みやすい英語論文を書くための準備、構成、草稿、そしてブラッシュアップまでの流れを解説し、英語と日本語の文章の書き方の違いや、効率化のためのお役立ち情報も紹介します。
ライティングセンターやwebの情報を活用する
さまざまな情報をWEBで集めるときに、やみくもにソースを辿るのは骨が折れます。
そこでリンク集が重宝されるわけですが、なかでもわたしのオススメは大学機関が設置しているライティングセンターでの情報収集です。
日本で知られるようになってきたのは近年ですが、多くの大学がそれぞれ論文執筆に関する情報や役立つリンクを紹介しており、公開されている情報は驚くほど豊富です。
また、校正サービスを提供する民間企業のブログやサイトの中にも、論文出版に役立つ実践的な無料ツールを豊富に紹介するものがあります。
個人的にもっとも頻繁に利用させていただいているリンク集。以下のデータベースの一部はこちらのページでも紹介されています。
国立情報学研究所が提供する論文データベース
科学技術振興機構が運営する電子ジャーナルサイト。日本国内の学協会が発行する電子ジャーナルおよびその他のコンテンツを公開。本文閲覧可。
Elsevierが提供する文献データベースSCOPUS収録の学術雑誌データベース
(カードが表示されないためテキストリンクでしつれいします)
日本国内の学術機関リポジトリに登録されたコンテンツのメタデータを収集し提供するデータベース
(こちらもテキストリンクでしつれいします)
引用数の多いピア・レビュー済みの学術雑誌を収録
民間の校正会社開発のAIツールまとめサイト。英文校正ツールTrinkaを有効活用中。
非ネイティブが英語に親しむには
おもな科学論文はどの国で研究が行なわれたかを問わず、そのほとんどが英語で書かれます。多くの執筆者が英語を母語としないのに、です。非英語ネイティブのわたしはどうして英語で論文を書くのだろう、と思ったこともあります。
でも答えはシンプルで、異なる母語を話す二者が共通語として使う言語が英語だからですよね。「Lingua Franca リンガフランカ」と言われ、English as Lingua Francaの略としてELFとも言われます。
論文英語は国際研究の リンガフランカであり、そのコミュニティのなかの独特な慣例があります。それに馴染む訓練が英語論文への近道と言ってもいいかもしれません。
何から書く?どう書く?
……といっても英語論文を書くための具体的なやりかたも同時に知っておきたいものです。これまでわたしが心がけた非英語ネイティブなりの工夫をちょっと書いてみます。
まず英語で書き始めること。これは過去のブログでもポストしてきましたが、いちばん効率がいいように思います。
次に、書きづらい箇所を日本語で書いてから訳すこと。こんなやりかたでも進みます。
最後にいちばん重要なのはパラグラフ・ライテイングを意識すること。
原則はONE paragraph ONE ideaということを押さえて、書き出しのトピックセンテンスに重要点を記す。つづいて見解、展開を述べる。わたしはこの流れを頭に置いて書くといちばんやりやすかったです。
英語論文を書く具体的な技術を身につけるのに、京都大学オープンコースウェア(OCW)の
として公開されている動画レクチャーが、たいへんありがたかったです。京都大学オープンコースウェア(OCW)では、講義や講座、国際シンポジウムなどの動画・資料を積極的に外部に公開されているので、ぜひアクセスしてみてください。
「使える」例文を習得する
先ほど独特な慣例がある、と書きましたが、英語論文に使える言い回しもそのひとつです。
ここではIMRAD形式に則ってそれぞれ頻用されるフレーズをご紹介します。
便利フレーズ
- In the present study we found (revealed)……
- Our study is the first to characterize (demonstrate) ……
- The results of the present study strongly suggest ……
- Our results complement the findings of NAME et al. (YEAR) who reported clinical importance of ……
- It is reasonable (appropriate) to suggest that ……
- Our results clearly demonstrate that …….
- The limitation of this study is ……
- In summary,
- In conclusion, the present study has demonstrated that ……
- From these results, we conclude that ……
- Complete understanding requires further investigation on the molecular level.
これらを効果的に使っていけば英文が安定しますし、締まると思います。
英文校正は通すべき
最後になりましたが、ぜったいに利用すべき! と断言できるのが英文校正会社のサービスです。
ラボ内に信頼できる英語ネイティブの共同研究者がいらっしゃるという幸運な方は別です(私もポスドク時代以降は同僚にネイティブチェックをお願いしていました)。
よく、英文校正会社はどこがいいかというようなトピックをネット上でも見かけますし、ラボ内のカジュアルな会話でも一度は話題にのぼるネタではないでしょうか。わたしも博士課程に進学してから、実際知りたかった情報です。
さまざま検討してきて思うのは、研究論文を託すことにもなるので最終的には自分が信頼できるところに出すのがいちばんではないかな、と思います。
そこで、わたしが細かくご紹介するよりすでに比較分析されているサイトがありますので、そちらのリンクをご参考までにご紹介します。
主要な校正会社の料金や納期がわかる相見積もりを3社から取り寄せることができるフォーム
英文校正会社30社以上の比較を見やすいよう一覧にて紹介
品質、納期、料金、使いやすさ、専門性から15社を分析・比較し、ランキング形式で掲載
繰り返しますが、上記のようなサイトで紹介されている情報は、あくまでも参考情報として受け止めることが大切です。
わたしが選んだのは、英文校正の質と価格のバランスを考慮した結果英文校正エナゴという会社でした(AIツールのリンク集を知ったのもこれが縁でした)が、このブログを読んでいただいている方全員の専門分野に必ずしもあてはまる選択とは限りません。
自分の書いた英語論文に対して、「かゆいところに手が届く英文校正」をしてくれる校正者に出会えるまで、あきらめずに色々な会社のサービスを試してみてください。
さいごに
英語学習は好きなほうでしたが、研究論文の執筆に取り組むときには、はじめはけっこう苦労しました。英文を書くのと英語論文を書くことはちがったのですよね。
日本語で先に書いたものを訳していいのか、はたまた……とフリーズしていた日々を思い出しながら、今回、論文の書き方をまとめてみました。
英語論文を書くことにとまどっている。これからの日本の学術界をになっていく若い研究者の方、学生さんのお役にたてれば嬉しいです。
また研究生活のヒントになることをつれづれと書いてみます。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!