ヒロコのサイエンスつれづれ日記

フリーのサイエンスライターです。論文執筆・研究・キャリアについて発信していきます。

英文校正にお金をかけるべき4つの理由

英語論文を書き終えたら、誰に原稿をチェックしてもらいますか?

大学院生やポスドクなら、共著者でもある指導教官やPI(研究室の主宰者)にみてもらうことになるかと思います。ラボから独立した後でも、かつての指導教官や知り合いの英語ネイティブ研究者に推敲をお願いするかもしれません。最終的に英文校正会社に依頼することもあるでしょう。

今回は、元バイオ研究者としてアメリカでのポスドク時代を含め英語論文を書いていた私の視点から、英文校正サービスを利用するメリットについて考えてみます。

プロに任せれば、やっぱり安心!

 

メリット1:査読者に良い印象をもってもらえる

投稿した論文はジャーナルの編集者を経て査読者の手に渡ります。査読者は多くの場合、当該分野の研究者で、単に論文の内容を理解するだけでなく、これを批判的に読み、論理に飛躍が無いか、参考文献の引用漏れが無いか、実験データに不足がないかなどを入念にチェックします。

「文法のミスを指摘されてリバイスになった」という話をよく耳にしますが、文法ミスの指摘は、本来、査読者の仕事ではありません。

ちょっと想像してみてください。もし自分が査読者だったら、文法的に間違っている、あるいは構造上読みにくい原稿を渡されたらどう思いますか?「忙しい中、無償で奉仕しているというのに、こんな読みにくい原稿をよこすなんて、いったいどこの誰だ?」って思いませんか?

査読のスタイルにもいろいろありますが、片側盲検やオープン査読の場合、誰が著者なのか査読者にわかってしまうのです。最終的に論文がアクセプトされたとしても、原稿の言語が未熟だと著者に対する評価は下がり、今後の引用件数やグラントの採択率にも影響しかねません。これは大変なリスクだと思いませんか?文法のチェックはもちろん、文の構造もよく練り直し、査読者にストレスを与えない原稿を投稿するよう心掛けたいものです。

研究者や英語ネイティブの知り合いに推敲を頼むと、確かに原稿は改良されますが、どこまで改良してくれるかは相手の能力と善意次第です。英文校正会社なら、最低限の文法チェックをする「梅プラン」だけでなく、文章の構造や論理にまで踏み込んだ「竹プラン」「松プラン」を用意しているはずです。予算の許す限り後者のプランを選びましょう。

 

メリット2:時間的コスパがよい

英文校正サービスのもう1つのメリットは、納期を決められることです。

知り合いに推敲を頼むと、相手も忙しい研究者ですから、どうしてもフィードバックに時間がかかってしまいます。英文校正サービスなら、納期に応じた料金プランが設定されていますから、予算に応じて納期を選ぶことが可能です。

研究分野にもよりますが、近年、特に中国からの研究者の参入により論文の数が激増した結果、以前よりもアクセプトまでの時間がかかるようになったという話を聞きます。「どうせリバイスになるだろうから、文法ミスは、査読者や編集者からのコメントが来てから直せばいい」と思っている人が意外と多いのですが、ミスが多いほど、やり取りの回数が増える、すなわちアクセプトまでの時間がさらに長引くのです。

投稿前に徹底的に修正しておけば、リバイスを受けたとしても、そのプロセスは短縮されます。投稿後に待ちぼうけをくらうぐらいなら、投稿前にしっかりと時間とお金をかけてリバイスにかかる時間が短くなる方が、断然いいと思いませんか?

また、英文校正サービスの中には、リジェクトされたりリバイスした論文の英文校正を引き受けてくれるところもあるので、是非活用しましょう。

さらに時間を短縮したいなら、本文だけでなく図や画像の編集を請け負っている英文校正会社もあるので、利用してみましょう。欧米の研究室ではテクニシャンが一括して図面編集作業を担っているといいます。日本でも大きな研究室ではそうしているかもしれませんが、研究費にゆとりが無いとなかなか難しいのが実情です。英文校正と合わせて図面編集を発注すれば割安になるケースもありますから、検討してみてはいかがでしょうか?

 

メリット3:コメントがもらえるので勉強になる

文章の修正というのは、実はとても骨の折れる作業です。論文は一つの建造物のようなもの。ある柱を別のものに取り換えたら、その他の柱も取り換えなければ、建物全体がゆがんでしまいます。いちいち取り換えるくらいだったら、初めから作り直した方が手っ取り早いこともしばしば。実際、多くのPIが、院生やポスドクのドラフトを丁寧に指導しようと試みつつも間違いを逐一修正することに疲れ、大幅に書き直して、さっさと投稿してしまうのです。

本当は、ドラフトのどこが良くないのか、クセも含めて指摘してもらうのが理想ですが、そこまで手間暇かけてフィードバックをくれるPIは稀でしょう。だから、「実験は若手、論文はPI」という分業体制のもと、いつまでたっても若手のライティングスキルが上がらないという現象が起きてしまうのです。

個人的には、若いうちは自己投資と割り切って「松コース」の英文校正に依頼し、しっかりとしたコメントをもらうのがいいと思います。実際、英文校正会社のなかにはNatureの元編集者がコメントをくれるという英文校正を提供しているところもあります。

本当に初心者(例えば大学院生)なら、以前の記事で取り上げた、論文の書き方を指導するオンラインコースを利用するといいと思いますが、「習うより慣れろ」とはよく言ったもので、ある程度の経験を積んだ後は、実際に書いたものを直してもらう方が勉強になります。

 

メリット4:盗用・剽窃をチェックしてくれる

イントロダクションの部分でよく見受けられるのですが、過去の論文に出てきた表現を(無意識のうちに)そっくりそのまま使ってしてしまうということが、しばしば起こります。同じ分野の論文では研究の背景が限りなく似てきますから、ある程度やむを得ないことではありますが、たとえ自分が所属する研究室の論文であっても盗用・剽窃は厳禁で、リジェクトの対象となってしまいます。

盗用・剽窃を防ぐには、原文を書き換える必要があります。一番簡単な方法は、同じ言葉を別の言葉に置き換えるやり方です。(ただし、ご注意ください。単純な言葉の変更だけでは盗用・剽窃を防ぐことはできません。文部科学省が盗用を含め研究不正行為に対するガイドラインを公開していますので、ぜひ一度読んでみてください。)

教養ある英語の書き方の基本に「一つの言葉を多用しない」というルールがあり、英語圏の人々は子どもの頃から、様々な語彙を用いるトレーニングを受けるそうです。例えば日記を書く時に「○○さんが~と言いました」というフレーズをよく使いますが、saidばかり使うと先生から書き直しを求められてしまいます(ちなみにsaidに代わる表現は50通りもあるらしいです)。同意語を探すためにシソーラスを使うよう指導されますし、文章を入力すると書き換え(paraphrase)てくれる無料ソフトというものも存在します。

さらに高度な技として、文章の組み立てから変えてしまうというやり方もあります。段落の最初に<結論>を書き、次にその<具体例や証拠>を示し、最後に<結び>の文でまとめるというのが一般的な段落の構造ですが、各パート<>ごとに2~3通りの文を用意すれば、最大20通り以上のバリエーションが生まれます。

私たち日本人は文法的に間違っていなければいい、論理的に通じればいいというレベルで満足しがちですが、英文校正会社には訓練を受けた多くの英語ネイティブの専門家がいますので、是非、彼/彼女らの力を借りましょう。また盗用・剽窃をチェックするためのAIを用いた様々なツールも開発されており、英文校正サービスのオプションに組み込まれていることがありますので是非活用したいものです。

 

結論:英文校正サービスを使うことは結果的に自己投資になる

英文校正サービスを利用するのには確かに出費が伴いますが、長い目で見れば、その出費は必ず良い結果につながり、何より自己投資になるということがおわかりいただけたでしょうか?もちろん、お金を払う以上、校正サービスは慎重に選びましょう。英文校正会社の比較サイトなどを活用するだけでなく、試しにアブストラクトを数社に校正に出して、気に入ったところを選ぶのも一つの手です。