研究倫理審査はこう乗り越えろ!(後編)
さて本日は、昨日投稿した前編に続きまして、研究倫理審査を乗り越えるための準備段階でクリアしておきたいポイントについて書いてみます。
3. 忘れるとピンチ事項
この準備ができていないとピンチ!という項目はこちらです。
- 提出先の確認
研究体制や審査の依頼先によって、様式だけではなく、細かな流れや提出書類が変わります。まずはしっかり把握しましょう。
- 利益相反自己申告
利益相反状況の審査は申請の都度受ける必要があります。研究活動中によくある利益相反については、こちらの記事に比較的わかりやすくまとめられていました。
- 講習の受講
組織機関によって指示がありますが、研究責任者もしくは研究分担者全員が臨床研究に関する講習を受講することは必須です。eAPRINなどのe-ラーニングの活用が多い印象です。大学院生、学部生も含んだ条件なので、万一がないように確認が何より大事です!研究倫理に対する研究者としての心得を理解するには、日本学術振興会のこのeラーニングが有効です。
4. FINERと PECO で研究の概要を整理
研究背景や意義を考える際に使われる、FINER やPECOという略語をご存じですか? 響きがかわいらしくて覚えやすいですが、これらはいわゆる「リサーチ・クエスチョンResearch question」という研究計画の構造化に関するもの。またもや身も蓋もなく書くとFINERは研究意義のチェック指標、PECO(もしくはPICOT)はその構造、です。
FINAERとPECOは、研究倫理審査委員会に提出する申請書類作成時にもとても役立ちます。
FINER
F: feasible(実行可能性)
I: interesting(興味深さ、面白さ)
N: novel(新しさ、独自性)
E: ethical(倫理性)
R: relevant(必要性、社会的意義)
つまり、この研究ってほんとうにやる意味があるの? のチェックになっています。
そしてPECOは具体的に疑問を組み立てること。
PECO
P: patient(研究対象となる対象群) 誰へ
E: intervention(介入) 何をすると
C: comparison(比較対照群)何と比較して
O: outcome(結果、効果)どうなる?
( 参考:福原俊一著、健康医療評価研究機構発刊「リサーチ・クエスチョンの作り方」 2008)
このようにリサーチ・クエスチョンで「何がわかっているのか」「何がわかっていないのか」「何が問題なのか」「なぜ必要なのか」を洗い出せてくると、必要な情報が整理され、倫理審査申請書の作成もだいぶ楽になってきます。
5. 最後の見直し点は「てにをは」?!
しかしながら、どんな突っ込みがあるだろうか、と緊張していると、倫理審査の過程で圧倒的に多いのは実は軽微な指摘です。そう、ここまでやって返ってくる指摘は「てにをは」だったり「句読点」だったりするのです。何とも言えない気持ちになります。
そんなわけで、最後に以下、見直すときに役立つチェック項目を挙げておきます。
- 第三者が読んで伝わるか?
- 誤字脱字を含むミスがないか?
- 目的と評価項目が対応しているか?
- 客観的に誰でも判断できる基準を設定しているか?
書いているとどうしても視野狭窄になるので、こういう細かなところは研究室や同僚の目を通してもらうのがいちばんいいように思います。
6. 倫理審査の概要をビデオで学ぶ
今回は自分の苦労をもとに書いて長くなってしまいました。倫理審査自体がかなり細かな手続きなので、なかなか説明はたいへんですね。
ちなみに放送大学のYouTube動画にて倫理審査の概要が包括的に紹介されています。申請書類の一部である研究計画書作成の基本を抑えたい方はぜひ一度視聴してください。
それでは、また次回も何か皆様の研究生活のお役に立てるトピックで、つれづれと文章を書いてみたいと思います。
最後までお読みくださりありがとうございました♪