ヒロコのサイエンスつれづれ日記

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国際会議で「英語の訛りが聞きとりにくい」問題:世界の英語を聞いてみよう

※本ポストは、2021年1月29日に公開したポストに加筆し、2021年3月26日に改めて公開しています。

 

皆さん、英語のヒアリングが難しいと感じる時はどんな時ですか?

私は、相手が早口でしゃべっている時、知らない語彙が使われている時、そして、やはり、訛りが強い時に聞き取りにくいと感じます。日本で生まれ育った人にとって、おそらく一番聞きやすいのはアメリカのカリフォルニアあたりの英語かもしれません。

でも国際会議に出席すると、様々な国籍やバックグラウンドを持った人々の英語が飛び交います。一口に英語といってもカリフォルニアとオーストラリア、イングランドスコットランドでは違いますし、インドや中国をはじめアジアの国々の人々が話す英語にはそれぞれ特徴があります。あらかじめその特徴を知っておけば、よりスムースにコミュニケーションが取れるはず。

今回は様々な英語の発音をご紹介します。

 

 

国際会議・学会

いろんな英語に慣れてコミュニケーションのチャンスを広げましょう

なお、この記事の目的は、各国の発音の訛りについて優劣を議論することではなく、あくまでも、それぞれの特徴をつかんでヒアリングに役立てることにありますのでご了承ください。

イングランド(RP)

RPとはReceived Pronunciation の略で、BBCのアナウンサーや王室の人々が話すようなイングランドの発音です。ミュージカル映画マイ・フェア・レディ』では、コックニー訛りを話す花売り娘のイライザが、ヒギンズ教授の特訓を受けて上流階級の英語を話せるようになりましたが、イギリスでは地域ごとに発音が異なり、RPを話すのが正統的とされているようです。

English with LucyのLucy Bellaさんの英語はモダンRP、イギリスのジョンソン首相の英語は上流階級向け(poshというそうです)です。「オウ」を発音するときに下あごを前に出す感じだったり、一部のrの発音が抜け落ちたり、抑揚のつけ方やリズム感がアメリカ英語とは異なります。

RPは比較的聞きやすいのですが、『ハリー・ポッター』や『ロード・オブ・ザ・リング』などの映画を観ていると、もっと聞き取りにくい英語が出てきます。それもそのはず。なんとイギリス英語の発音は17種類もあるのだそうです!これらすべてを頭に入れておく必要はありませんが、それぞれの特徴に慣れておくと、ヒアリングが楽になると思います。

 

中国

今日、研究者に占める中国人の割合はますます増えています。アメリカでポスドクをしていた20年前でも、どこの研究室にも必ずといっていいほど中国出身の方がいました。

皆さん上手に英語を話すので、正直、聞き取りづらいことは無かったのですが、典型的なチャイニーズ英語というものがあればと思い探してみたら、マレーシア出身香港在住のJun Bien Lawさんのサイトを見つけました。中国の人にむけて、「こんな風に英語を発音しちゃだめよ」という動画を配信しています。固有名詞が中国語読みになってしまったり(例えばJames Bondが「ジャンスボーン」になる)、nの発音がうまくできなかったり(舌先を前歯の裏につけないために鼻濁音のようになる)といった傾向があるようです。

 

オーストラリア

イギリスvsアメリカvsオーストラリア英語比較は英語系YouTuberが扱う人気のトピックの一つ。中でも面白かったのが、英語YouTuberのAtsuさんが紹介する動画です。エイをアイと発音するという話は有名ですが、発音が違うだけでなく、単語も英語や米語と異なることがあるようです。イントネーションは米語より英語に近いように感じます。

 

インド

インドの方たちの世界的な活躍には目を見張るものがあり、インド英語を耳にする機会も増えてきています。ロンドン在住のインド人Anpuさん南インドバングラデシュスリランカといった地域の人々が話す英語を解説しています。tの発音がラ行に近い感じになったり、rが巻き舌になったり、wの発音がvになったりという傾向があり、語尾を上げるイントネーションも感じられます。

 

フランス

2020年にノーベル化学賞を受賞したエマニュエル・シャルパンティエ博士はフランス出身の方で、アメリカでポスドクをし、現在はドイツのマックス・プランク感染生物学研究所の所長を務めています。シャルパンティエ博士とピアニストのイゴール・レヴィット氏の対談を見つけました。thの発音がザ行になったり、個々の単語のイントネーションがフランス語風になったりする傾向がみられます。

 

アメリ

アメリカ英語は日本人にとって大変馴染みのある発音です。学校の教材やNHKの「基礎英語」という番組で用いられているのもアメリカ英語です。アメリカ英語の発音にもいくつかのスタイルがあり、カリフォルニア、南部、ニューヨークなどが知られていますが、スタンダードなアメリカ英語を話すコツがこちらのサイトで紹介されています。

主にtとrの発音に特徴があり、例えば「city」のtをdの音に置き換える、「important」や「plant」のtを発音しない、「international」のtはインターではなくインナーと発音する、とか、「r+子音」「単語末尾のerやary」のrはしっかり舌を巻いて発音するなどが挙げられます。

これらのルールの反対をやるとイギリス英語になるので、英国風の発音にしたい場合は、「tをはっきり発音して、単語の始まりのr以外は発音しない」ようにしてみるといいですね。

 

日本

私たち日本人はrとlや、bとvの発音の区別が難しいです。またthを発音するときに舌を歯で軽くはさむことが苦手という方も多いです。でも、がっかりしないでください。それって日本人だけじゃないんです。

実はスコットランドウエールズではrの発音がラリルレロに近いと言われていますし、前述のようにフランス人の中にはthisをジスと発音する人が少なくありません。

これだけ発音をご紹介しておきながらこんなことを書くのもなんですが、

大事なのは発音よりも抑揚

だと思います。

英語YouTuberのYYYOKOOOさんが、正しい日本語を、(1)正しい発音×デタラメな抑揚、2)外国人風の発音×正しい抑揚、の2つの方法で話した場合、どちらが聞き取りやすいかという興味深い実験を紹介しています(5:42あたり)。ご覧になるとわかるのですが、2の方が聞き取りやすいんですよね。

例えばノーベル生理学医学賞を受賞した利根川進博士の英語は、良い例だと思います。rの発音が若干ラリルレロ風だったり、vの発音がbに近いようにも聞こえるのですが、完璧な抑揚のおかげで非常に聞き取りやすい英語になっています。

 

カタカナ英語でも「らしく」聞こえるコツとは?

ヒアリングというテーマから、少し脱線しますが、ついでなのでカタカナ英語でも通じるコツをご紹介しましょう。ポイントは、

英語をカタカナに当てはめてもいいけれど
抑揚やリズムを崩さないように当てはめる

ことです。

たとえば、internetは「インターネット」ではなく「イナネ」という発音(ただしアメリカ英語)になります。「イン・ター・ネッ・ト」だと4音節もありますが、「イ・ナ・ネ」は3音節。音節の数をネイティブの発音と一致させることを意識してみましょう。

YYYOKOOOさんの動画(7:00あたりから)やJC’s PLACEさんの動画では、他の具体例も紹介されています。また、さらに多くの単語や、文のまとまりで抑揚を習得したい方は、脳科学者・池谷裕二博士の「怖いくらい通じるカタカナ英語の法則」がお薦めです。

話せるようになると聞き取れるようになりますし、聞き取れるようになると話せるようになるそうです。「(英語力を維持するために)インプットとアウトプットのバランスを同じくらいにしている」と帰国子女芸人のフワちゃんも言っていました。

学会の口頭発表を英語で行う予定がある方は、過度に発音の間違い恐れず、間の取り方や強弱、音の高低やリズムを意識して、堂々と原稿を読むところから始めてみてみると、ヒアリング力もアップするのではないでしょうか。